M&Aでは、財務内容や売上推移に注目が集まりがちですが、実務上非常に重要なのが「許認可」の確認です。
特に中小企業M&Aでは、
- ・建設業
- ・産業廃棄物業
- ・運送業
- ・飲食業
- ・人材派遣業
- ・古物商
- ・医療・介護
- ・酒類販売
など、許認可を前提として成り立っている事業が数多く存在します。
許認可の確認を軽視すると、
「会社を買収したのに事業が継続できない」
という重大なリスクにつながることがあります。
●許認可は“会社の価値そのもの”である場合がある
例えば産業廃棄物処理業では、許可を取得するまでに多大な時間とコストを要します。
また、建設業許可や運送業許可なども、一定の人的要件・財産要件・実績等が求められます。
つまり、
「許可を持っていること自体が参入障壁」
になっているケースも少なくありません。
そのため、M&Aにおいては財務だけでなく、
- ・許可が有効か
- ・更新期限はいつか
- ・行政処分歴はないか
- ・現在の事業実態と一致しているか
などの確認が極めて重要です。
●「許可がある」だけでは不十分
実務上は、
「許可証を持っている=安心」
とは限りません。
例えば、
- ・既に更新期限が迫っている
- ・専任技術者が退職予定
- ・名義貸し状態
- ・実態が許可範囲を超えている
- ・必要な変更届が未提出
などのケースもあります。
特に中小企業では、長年の慣習で運営されており、法令対応が追いついていないことも珍しくありません。
●許認可は“引継ぎ可能か”の確認も必要
M&Aスキームによって、許認可の扱いは大きく異なります。
・株式譲渡
法人格がそのまま継続するため、許認可も維持されるケースが多くなります。
・事業譲渡
許認可を引き継げず、新規取得が必要になる場合があります。
例えば、産業廃棄物処分業許可や運送業許可などは、事業譲渡後に改めて許可取得が必要となるケースもあり、スキーム選定に大きく影響します。
●実務で特に注意すべきポイント
① 許可証原本の確認
コピーだけでなく、
- ・許可番号
- ・有効期限
- ・許可内容
- ・事業範囲
を確認することが重要です。
② 行政処分歴の確認
過去の改善命令や指導歴がある場合、将来的なリスクにつながる可能性があります。
③ 人的要件
建設業の専任技術者など、
「特定人物がいないと維持できない許可」
は特に重要です。
キーパーソン退職により、許可維持が困難になるケースもあります。
④ 実態確認
例えば、
- ・「有価物取引」とされているが実態は産業廃棄物処理
- ・許可範囲外の営業
- ・名義のみの運営
などは、DD(デューデリジェンス)で慎重に確認すべきポイントです。
●許認可確認は“事業継続性”の確認
M&Aでは、
- ・売上
- ・利益
- ・EBITDA
などの数字が注目されます。
しかし、そもそも営業継続できなければ、その数字に意味はありません。
許認可確認は単なる事務手続きではなく、
「買収後も事業を継続できるか」
を確認する極めて重要なプロセスです。
特に許認可業種では、
“許可そのものが事業価値”
であるケースも多く、早い段階から専門家を交えて確認することが重要となります。
執筆者:杉村 康裕
M&Aアドバイザー / 中小企業診断士